学校を卒業し、初めての就職。転職。結婚。出産。20代は「変化」の時期かもしれません。様々な変化に直面し、思い悩むことも多い時期ですよね。
本記事では私の独断と偏見で選んだ、20代女性にぜひ観て欲しい映画を4つのジャンルに分けてご紹介します。
・強い女たちが主役の映画
・人を愛する喜びと悲しみを描いた映画
・生きる意味を見つける映画
・見えざる存在に光を当てた映画
20代の頃に観たかったと思う作品と、当時実際に観て影響を受けた作品を中心に選びました。メッセージ性が高く、生きるヒントを得られる不朽の名作ぞろいです。
目次
20代女性におすすめ【強い女たちが主役の映画】
マッドマックス 怒りのデス・ロード
かっこいい女たちに惚れる
- 公開:2015年
- 時間:120分
- 制作国:アメリカ
第88回アカデミー賞美術賞をはじめ6部門を受賞した傑作。『マッドマックス』シリーズの第4作にあたる。
水も尽きかけた荒廃した世界。資源を独占しているイモータン・ジョーとその手下のウォー・ボーイズ。
ジョーの右腕のフュリオサが裏切りを図り、ジョーに捕らわれていた「子を産むための女」たちを引き連れて逃走する―。
ストーリーはいたってシンプルですが、猛烈なカーアクションや演出には惚れ惚れします。
イモータン・ジョーが見るからに極悪人で卑劣極まりないので、フュリオサたちの反撃にはこちらも力が入り、画面にくぎ付けになってしまうんです。
そしてフュリオサの故郷に住む「鉄馬の女たち」が、めちゃくちゃカッコいい!熟女と老女の軍団なんですが、未来のために体を張って戦い続ける姿にただただ敬服します。
こんな生き様を見せつけられたら…。「覚悟」を持って生きているかと自分に問いたくなる作品です。
未来を花束にして
花束を受け取っている私たち
- 公開:2017年
- 時間:106分
- 制作国:イギリス
1910年代のイギリスで、女性参政権を求めて闘った女性たちの物語。
過酷な労働下で、自由に意見を言うことすら許されなかった時代。
権利を得るために全てをなげうってまで訴え続ける姿は、何かを変えるにはそれなりの大きな代償を伴うことを物語っていました。
新しい権利を主張すること、世の中を動かすことの厳しさを痛感します。何度も胸が張り裂けそうになりました。
そしてもう一つ言えることは、行動を起こさなければ何も変わらないということ。先人たちの決死の思いが今の時代に繋がっていることを、改めて実感します。
20代女性におすすめ【人を愛する喜びと悲しみを描いた映画】
アデル、ブルーは熱い色
がむしゃらな恋も、ときには必要
- 公開:2014年
- 時間:179分
- 制作国:フランス
カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。
アブデラティフ・ケシシュ監督とともに、エマ役のレア・セドゥーとアデル役のアデル・エグザルコプロスに対してもパルム・ドールが授与された。俳優がパルム・ドールを手にしたのはカンヌ史上初めて!
青い髪の美大生のエマに一目惚れした、文学を愛する高校生のアデル。ふたりの女性は情熱的な恋に落ちていく―。
恋愛は色んな感情を教えてくれますが、失恋はできればしたくない…。失恋の傷って思った以上に深いから厄介です。
そもそも引きずらない性格ならいいですが、恋愛に沼るタイプは気づかないうちにどっぷりハマっていたなんてこともありますよね。
失恋をきっかけに新しいことを始めてみたり、自暴自棄になってみたり、傷が癒えるのをただひたすら待ってみたり…。
でもなかなか癒えない。ああ、苦しい。もう二度と恋なんてするものか!
そう思っていたはずなのに、いつの間にか新しい恋をしてまた浮かれて一喜一憂しているなんてことも…。でも、若いときはなおさらそれでいいと思うんです。
自分の中の様々な感情を経験することが、若いうちは必要なんだと思わせてくれる映画。
上映時間が179分と長いですが、ふたりの生活が繊細かつ丁寧に描かれているので一見の価値はあると思います。
ぐるりのこと。
めんどくさいけど、愛しい人
- 公開:2008年
- 時間:140分
- 制作国:日本
1993年、小さな出版社に勤める妻の翔子は何事もきっちり決めていないと気が済まない性格。一方、ひょうひょうと生きる夫のカナオ。
そんな凸凹夫婦はつつましくも幸せな日々を送っていた。あることをきっかけに、翔子はバランスを崩し始める―。
リリー・フランキー演じるカナオと木村多江演じる翔子の、お互いを見つめる表情がたまりません。ふたりの感情が手に取るようにわかる気がします。
そして、ふたりが初めて感情をぶつけ合うシーンとその後のAkeboshiの楽曲「Peruna」が流れ始めるシーンが大好きなんです。
何度見てもこのシーンで感情が溢れ出します。
人の周りでは色んなことが起こりますよね。ときにその流れに飲み込まれ、息ができなくなることも。
でも、この夫婦のように歩幅を合わせて手を取り合えば、自分たちのペースで少しずつ毎日と向き合っていける。それでいいんだと思わせてくれる映画です。
ボーイズ・ドント・クライ
自分に正直に生きること
- 公開:2000年
- 時間:119分
- 制作国:アメリカ
ブランドンを演じたヒラリー・アン・スワンクは、アカデミー主演女優賞を受賞。
身体的には女性であるが性別違和があり、男性の姿で暮らしているブランドン。
彼はバーで知り合ったラナという女性に一目惚れする―。
息ができなくなるほど苦しく、哀しい物語です。それなのに、実話だということが何より辛い…。
最初に見たときはあまりにも衝撃的で、しばらく放心状態になったのを覚えています。
それでも一度は見てほしい理由は、彼がどんなことに喜びを感じ、憤ったかという真実を多くの方に知ってほしいと思ったから。
性別違和に限らずどんな時代でも“彼のような存在”はいるはずだからこそ、目を背けずに知る必要があると思うんです。
20代女性におすすめ【生きる意味を見つける映画】
ドリーム
夢を追い求める背中は清々しい
- 公開:2017年
- 時間:127分
- 制作国:アメリカ
1960年代初頭、アメリカ南部では依然として白人と有色人種の分離政策が行われていた。
仕事と育児を両立しながら、懸命に生きる姿に脱帽です。逆境にめげず夢に向かって突っ走る背中はやっぱりカッコいい!
ジャネール・モネイ演じる数学者でエンジニアのメアリー・ジャクソンの奮闘ぶりは、特に印象に残っています。
劇中ではエンジニアになるために工学の学位を得ようと奔走しますが、実際は1958年の段階で学位を修得しエンジニアの夢を叶えていたようです。
史実と若干異なる描き方がされている部分もありますが、頭が切れる女性たちの姿は颯爽としていて清々しく勇気をもらえるはず。
ソウルフル・ワールド
人生のきらめきって何?
- 公開:2020年
- 時間:101分
- 制作国:アメリカ
ディズニー&ピクサーの長編アニメ映画で、劇場公開されず2020年に「Disney+」にて配信された。
ニューヨークでジャズピアニストになる夢を持ち続けている音楽教師のジョー。夢が叶うあと一歩のところでマンホールに落下してしまい、目覚めた先はソウル(魂)の世界。
そこで出会ったのは、人生に絶望し自分という存在に価値を見いだせない「22番」というソウルだった―。
「人生のきらめきとは何か?私たちが生きている意味って何?」というのがこの映画のテーマ。物語は哲学的で大人向けです。
自分の生きる意味はジャズだと思っているジョー、「夢では食べていけないのよ」と現実的なジョーのお母さん、「人生のきらめきなんてあるわけないじゃん」と投げやりな22番。
それぞれの立場から「人生に大切なこと」を見つけていくんです。
最後にジョーが見つけた“人生のきらめき”には、深く納得できて心を打たれます。最後のセリフは特に好き。この世界が明るく開けていくような気がします。
20代女性におすすめ【見えざる存在に光を当てた映画】
わたしは、ダニエル・ブレイク
わたしは血の通った人間、感情のある一人の人間
- 公開:2017年
- 時間:100分
- 制作国:ベルギー、イギリス、フランス
イギリスの複雑な福祉制度と貧困が描かれた作品。
心臓疾患のあるダニエルは医師から労働を止められているにも関わらず、国からの援助を受けるためには求職活動をしなければならなかった。
そんな中で、2人の子どものシングルマザーと出会ったダニエルはいくつかの”矛盾”に直面していく―。
涙なしには見れない映画。あるシーンで涙腺が崩壊します。
貧困が人の尊厳や自尊心を打ち砕いていく様は、目を背けたくなるほど痛烈に私たちの心に訴えかけてくるものがありました。
福祉制度の公平性や効率性を求めるあまり、本当に必要な人々へ支援の手が届かないという現状が描かれています。日本においても決して他人事ではなく、私たちに普遍的なメッセージを投げかけているように感じました。
「私は人間だ。犬ではない」と叫ぶダニエルの心の声は、制度のはざまに立たされた人々の心の声を代弁したものかもしれません。
生きていれば病気になったり、怪我をしたり、様々な事情で働きたくても働けなくなることがありますよね。そんなときでも心の豊かさまで失ってはいけないと、ダニエルは教えてくれていると思います。
万引き家族
幸せは、カタチじゃない
- 公開:2018年
- 時間:120分
- 制作国:日本
カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。
治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀、治の母の初枝は、東京の下町で5人肩を寄せ合って暮らしている。初枝の年金だけでは生活費が足りず、万引きなどの犯罪を繰り返して生活していた。
ある日、治と祥太は団地内で震えている「ゆり」と名乗る幼女と遭遇する。見かねて家に連れて帰ると、ゆりの体には無数の傷があった。信代はゆりの境遇を思いやり、娘として育てることにする―。
またもやリリーさんの登場です。是枝監督作品の常連俳優で、『そして父になる』などいくつも出演されています。
それにしても終盤の安藤サクラさんの演技には震えました。あまりにもリアルで、安藤さんは完全に信代という女性そのもの。
この演技は一見の価値があると思います。そして、開かれたラストには心を打たれました。
制作時のスタンスとして、「誰かを悪者として描くことをせず、観客に問いを投げかけることを目指している」と語っている是枝監督。
誰かを批判して終わりではなく、その先に何があるかを考える余白を残してくれています。
まとめ
映画は観終わった後も、私たちにメッセージを贈り続けてくれるものだと思っています。
鑑賞した年齢や状況によって感じ方も変わるので、観る度に新たな発見があります。
波に乗っているとき、絶望したとき、やる気をなくしたとき、人生は平坦な道のりばかりではありませんよね。
そんなときにちょっと背中を押してもらえたり、少しだけ希望を持てたり、駄目な自分も肯定してもらえたりするのが映画の愛すべきところではないでしょうか。
出会えて良かったと思える映画が一本でもあれば、その先の人生はもっと楽しくなるかもしれません。